【空き地を覆う葛】葛はマメ科のつる草です


お菓子や料理に材料として使う葛粉ですが、葛粉の原料は、葛という大豆の仲間・マメ科のつる草です。
皆様は葛という植物をご存じでしたか?
葛は花から根まで余すことなく利用することができる万能植物なのです。
しかも、イソフラボンというポリフェノールが含まれていて、美容や健康にも期待ができると最近注目されています。

これが葛の葉です。川沿いや空き地、舗装されていない堤防沿いなど、どこにでも生えています。

(クローバーのように3枚1組になっています。)
つる草というのはつるで伸びていく植物のことで、分かりやすくいえばアサガオが代表的です。
元々は雑木林などで高い木々に巻き付いて樹幹を作っていましたが、最近では電信柱や道路標識に巻き付いている姿をよく見かけます。
葛は生命力が強くあっという間に生え広がり、また生える速さは1日に40cmという驚異のスピードです。
夏は盛んに光合成をするため、冬にたくさんの澱粉が根に蓄えられ、根は太く大きく成長します。
元々葛の葉は家畜の飼料として使われており、マメ科で栄養価が高いため「ウマのおこわ」や「ウマのぼたもち」という別名で呼ばれています。
他にもお茶にしたり、乾燥させた葉を塩に混ぜてハーブソルトにすることもできます。

【クズのつる】初夏のクズのつるを刈り取って発酵


葛のつるからは繊維を取り出して布を織ることができます。
初夏、まっすぐに伸びた葛のつるを刈り取り、リースを作るように丸めたら、大鍋で湯がきます。
それを土の中、もしくはススキの中で2~3日発酵させます。
すると、表面が柔らかくなるので、川の中で洗ってあげると、綺麗な繊維だけを取り出すことができます。

【葛の繊維】川の水で洗い、繊維だけを取り出す


これが葛の繊維です。
昔々、行者様が修行中に水にさらされて白くなっている繊維を見つけ、葛布の作り方を人々に伝えたのが始まりと言われています。
葛は絹のような光沢が出ることから、平安時代にはきらびやかな貴族の着物に使われました。
また、葛には抗菌作用があることから、戦いで負傷することの多かった戦国時代には鎧下として使われました。
同じように抗菌作用があることから、藍染や柿渋染めで染められる着物も多かったそうです。
水にぬれてもすぐに乾き、重くならないことから、江戸時代には火事羽織としても利用されました。
葛布が時代時代で重宝されてきたことは、歴史からもよくわかります。
明治になって着物の需要がなくなりますが、光沢のある美しい壁紙として海外にわたり、「掛川グラスクロス」と呼ばれました。
今は壁紙需要も縮小し、職人が作る伝統工芸として、高級な土産物として販売されています。

【葛布】一つ一つ丁寧に織り上げて葛布ができます。


一つ一つ全ての工程が手作業で、昔はそれぞれの工程を分業で行っていました。
葛のつるの刈り取り、川での洗いの作業、繊維を細く割いて結び合わせて糸にする人。はたを織って布を作る人。

着物、帯、草履、カーテンなど、それぞれの商品に仕立てる人。
今は生活様式が変わり、糸を作る人がいなくなってしまい、原料の供給が難しい状態です。
産業革命以降、紡績工場ができ、産業的に糸や布を大量生産できるようになりました。
ユニクロやGUなどに代表されるように、安価な服が出回り、織物の文化がなくなろうとしています。
でも、あなたの今着ているその服のその糸は、誰がどうやって作ったものか、考えたことがありますか?
日本には古代布と呼ばれるものが今も残っています。しな布、芭蕉布、そして葛布です。
最近はアトピー性皮膚炎の人も増えてきていますが、洗濯洗剤だけでなく、糸、染料、その他様々な添加物が原因だそうです。
そういう悩みを抱えた方は、自然の糸や織物の服を選ぶ方が多いです。
食への関心が増えてきていますが、このお話を機会に、服への興味も持っていただけると嬉しいです。
年を越して木質化した葛のつるは、かごを編むこともできます。

【葛の花】甘酸っぱくてよい香り


これが葛の花です。
葛は秋の七草の一つとされています。
※秋の七草:オミナエシ、ススキ、キキョウ、ナデシコ、フジバカマ、クズ、ハギ

(頭文字をとって「お好きな服は」と覚えると覚えやすい!)
秋といってもまだ暑い、9月頃に紫色の花が咲きます。
香りは甘酸っぱくいい匂いがします。
よく電柱などの高いところにまで登っている葛に花が咲いています。

【葛の花】葛の花は二日酔いの薬にもなります


葛の花は乾燥させると「葛花(かっか)」という二日酔いの薬にもなります。
(お酒が好きだった水戸光圀も葛花を愛飲していたそう。)
漢方薬として飲もうと思うと処方箋が必要かつ煎じる必要がありますが、葛の花は乾燥させればポプリやハーブティーとしても楽しめます。
虫が付いていることが多いので、新聞の上に広げて虫を干すか、花弁を一枚ずつ水洗いしてもいいでしょう。
乾燥させずに、フレッシュな葛の花をティーポットに入れてもハーブティーになります。
最近では葛の花イソフラボンが健康食品「お腹周りの脂肪を減らす」としても注目されてもいます。
(例)
・ダイエット サプリ 葛の花 ラクダ
・葛の花イソフラボンスリム
・GENBIお腹の内臓脂肪・皮下脂肪を減らすのを助ける 葛

【葛の根】山野に自生する葛の根


これが葛の根です。
葛は栽培されておらず、山野に自生しているものを掘り出すため正確な年数はわかりませんが、5年くらいで大人の足くらいの大きさになります。
夏の間にたくさん茂らせた葉っぱで光合成をし、秋から冬にかけて葛が枯れ落ちる頃に養分が根に送られて澱粉として蓄えられるため、

毎年少しずつ大きくなります。

【巨大な葛の根】


中には、人の背丈よりも大きな葛の根もあります。
ですが、残念ながら大きければ大きいほど、古ければ古いほど、葛粉がたくさんとれるとは限りません。
年数が経つほどつるが伸びて葉が生い茂り立派な樹幹ができるのですが、台風などの影響でつるが切れてしまえば養分を根に戻すことができないため、

いくら大きな根でも繊維ばかりが残って澱粉はほとんどないという場合もあります。

【葛根湯】葛根は漢方薬「葛根湯」の主原料


古来日本では葛が薬草として用いられ、奈良にある薬草園には葛が植えられていました。
昔は薬と食べ物との区別が曖昧で、体に良いものはすべて食べ物で、食べ物をうまく利用して薬の代わりにしていました。
また葛粉は江戸時代に「はしか」が流行した際に「食てよいもの」として瓦版で紹介され滋養食とされました。

医者に診てもらったり薬を買うことがままならなかった時の貴重な「医者替わり」だったと思われます。
皆さんが一番よく知っているのが、漢方薬「葛根湯」という風邪薬だと思います。
葛根(カッコン)、大棗(タイソウ)、麻黄(マオウ)、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、生姜(ショウキョウ)

という7種の漢方を混ぜてあり、画像に赤丸を付けているのが葛根です。
風邪に限らず鼻炎や頭痛など、炎症が起こって熱が出るような急性の病気の初期にも広く使われます。
発熱がなくても、うなじや背中が緊張しているようなときに用いられます。
慢性頭痛、中でも緊張型頭痛や肩こりの治療でもよく処方される薬で、体を温めることでこれらの症状を和らげるそうです。

【葛粉】葛粉は日本のスーパーフード


葛の根からとれる葛粉は水晒を繰り返しているため葛根湯の成分が全て残っているわけではありませんが、

葛粉に含まれる微量成分症状の緩和に役立つことを経験的に知っていた昔の人の知恵が、

「風邪の引き初めに葛湯を飲む」という家庭医学の習慣に繋がっていると考えられています。
また、昔から葛を食べ続けていると骨が丈夫になるとも言われています。
役行者が厳しい山での修行を続けられたのも、葛の力があってのことかもしれません。吉野山で800年間宿坊を続けている竹林院でも、

習慣的に葛を食べてきたそうです。
天極堂でもお客様から「骨が太くなった」「骨密度が上がった」という嬉しいお声をいただくことが多く、

弊社社長の骨密度は平均年齢を大きく上回り20代男性よりも高いという結果が出ました。
それ以外にも、今注目されているのが先ほどお話しした「イソフラボン」です。
イソフラボンには様々な健康効果が報告されており、美容と健康のために豆乳を飲んでいる女性も増えていますが、

はじめにお伝えしたようにクズもマメ科の植物なのでクズにも大豆と同じくイソフラボンが含まれています。
1300年の歴史が安全と効能を証明してくれているのが葛です。
ぜひおうちでも葛料理を楽しんで、美容と健康に葛を有効活用してみてください。(終わり)