葛乳酸菌を飲みやすい形にした「葛研究所『タブレット』」

 

新型コロナウイルスの感染拡大により、奈良県内でもその不安感が日ごとに増している。その一方で、風邪やインフルエンザの流行はあまり聞かれなくなった。その背景には、手洗い、アルコール消毒、うがいの徹底といった衛生意識の高まりに加え、体の免疫力を高めるような食品・食料への関心が高まっていることがあるようだ。
こうした中、乳酸菌は体の免疫を高めるとして広く知られ、受験シーズンには乳酸菌飲料が大人気だったという。この乳酸菌に目を付けたのが、明治3年創業で150年の歴史を有する奈良県御所市の「井上天極堂」だ。
奈良県吉野地方特産の葛を精製する「吉野本葛」を製造し全国に販路を築いている同社は、免疫を活性化させる免疫賦活作用を持つ「天極葛乳酸菌」を平成29年に開発。昨年6月、天極葛乳酸菌を配合した葛湯「乳酸菌葛湯」を商品化した。
もともとは別の研究課題の試験中に、高い免疫賦活作用を示した乳酸菌が発見されたことから、乳酸菌の研究開発に取り組むことになった。葛の植物性乳酸菌を摂取できる天極葛乳酸菌は、中部大学で行った。インフルエンザ試験で、少量の摂取でも免疫賦活作用があることが確認できたという。
同社は、天極葛乳酸菌を手軽に摂取できるようにとゼリータイプの商品化を検討中。保育園を対象にしたモニター調査で、天極葛乳酸菌を配合したゼリーを継続して食べた園児のインフルエンザなどウイルス性感染症の羅患率(4.8%)は、地域の保育園児平均(48.2%)より大幅に低かったという。
また、天極葛乳酸菌を直径5㍉の粒状にした「葛研究所『タブレット』」の販売をこのほど始めた。昨今の新型コロナウイルス流行を受け、全世代の男女が場所を選ばず手軽に摂取できるようにした。
同社の開発担当者、藤野布久代さんは、「古くから葛の根は葛根湯や葛湯など人々の健康を支えてきた。受け継がれてきた葛に秘められた力を解明することで未来へつないでいきたい。」と話している。
老舗が発信する、従来製品から派生した健康分野の商材の今後に期待したい。

(東京商工リサーチ奈良支店長 佐藤公一)