マルヤ製作所様から「桜皮」を使った国産材100%の「おひつ」をいただきました。

天極堂では山のネットワークで様々な商品を仕入れて販売しています。

その一つ「桜の皮」は雅楽の笛や、曲げ物を作る方々にとって重要な材料の一つです。

 

 

今日は「桜の皮」をいつも仕入れてくださっている、岐阜県のマルヤ製作所様から、桜の皮を使った「おひつ」をいただきましたので、弊社の商品採用案件としてご報告させていただきます。

このおひつは全て国産材を使用しています。

木の香りがとてもよく、丁寧な手仕事で、手触りもなめらか。

小ぶりなサイズで、2~4人分のご飯を入れるのにちょうど良いと思います。

伝統工芸というと日常遣いはちょっとと思うかもしれませんが、日常使ってこその生活の道具ですから、どんどん使っていただきたいです。

また、金属が使われていないので「電子レンジ」で温められるのは、現代に於いてもうれしい利点ではないでしょうか。

(電子レンジ使用により、雑菌やカビの繁殖を防ぐこともできるそうです。)

フタの裏には「木曽駒印」の焼き印があります。

このおひつのどこに桜の皮が使われているかというと、側面の小さな茶色の四角。これが桜の皮なんです。

 

 

 

「曲げわっぱ」というのは木を柔らかくしてくるりと巻いてくるのですが、巻いてきた端っこを止めるのに桜の皮が用いられます。安いものだとプラスチックや金属でホッチキス止めのように加工されていますが、桜の皮を使う技術は今も伝統工芸として受け継がれています。

毎年11月頃に行われる天極堂での桜の皮の選別作業です。

これは2年前の天極堂での桜の皮の選別作業の様子です。

 

 

天極堂は吉野本葛の原料となる葛の根を山から掘り出しているため、創業当時から独自の山のネットワークを持っており、葛粉だけでなく、山に生えている笹の葉、柏の葉、サンキラの葉など様々な植物を商品にしてきました。その中に桜の皮があります。

 

 

毎年桜の皮が入荷されたら、全国から桜の皮を使う伝統工芸の職人さんたちが集まります。そして、倉庫で選別作業を行います。

桧などの板を曲げて作る曲げ輪を留めるのに、江戸以前からずっと使っている山桜の皮。

大川セイロ店でも、初代の時から山桜の皮を使っていて、他のものは使いません。

山桜の皮はこく(磨く?)と、つるつるになり、きれいな色が出て、和ゼイロを留めるのに欠かせません。
一時期ビニール製が出回りましたが、蒸気で蒸すと徐々に溶けて薄くなり、外れてしまうこともあるそうです。

今も針金やホッチキス、輸入物の接着して作られた廉価な蒸し器も販売されていますが、修理ができません。大川さんの道具は昔ながらの製法で作られており修理ができるので一生物と言っても良いものです。

曲げ物のセイロの素晴らしさは素材が呼吸できる事にあります。

ステンレスやプラスチックは、内壁に水蒸気が付き、セイロ内部が水っぽくなり美味しい蒸し物を作るには工夫が必要になります。

大川さんのセイロは合わせ目も微妙に内部を最適な状態に保つことができる調理器具として真価を発揮します。茶碗蒸、赤飯、饅頭などは言うまでもなく、料理によっては茹でるより遥かに美味しくなるそうです。

キレイな茶色で、節が少なく、表面がつるりとしているのが、曲げ物にとって良い皮。節があったり表面がざらついているものは折れやすく、紐としては使うことができないからです。

 

 

2トンあった皮の内、曲げ物の紐として使えるのは4~5束程度。

今日残った皮は「茶筒職人」など「節を模様として使う人」に回るそうです。

目的(最終商品)が違うと原料の選び方が全く違うということを学びました。

2020年1月に新聞で「曲げ物」の技術について掲載されました

丁寧な手仕事 守り抜く 寺迫山田の曲げ物

 

 

薄い木の板を曲げて一周させた「曲げ輪」の両端を削り、とじ合わせて円柱にする。桜の樹皮でとめて仕上げる。円柱の底面に網を張るとふるいや裏ごしになる。職人の手仕事で、伝統工芸品としての「曲げ物」が形作られていく。

 

 

粉や粒を選別するふるい、食材をなめらかにする裏ごし、餅米などをふかすせいろ。曲げ物は生活に密着した身近な道具だった。

 

 

長岡市の無形文化財、寺泊山田の曲げ物は現在、足立茂久商店だけが製造する。職人は11代目の足立照久さん。ヒノキの曲げ輪は奈良県から取り寄せ、新品を作るだけでなく網の張り替えもする。

 

 

寺泊山田は日本海と丘陵地に挟まれた海岸沿いの集落。寺泊町史によるち、北国街道の宿場だった。曲げ物作りは漁業や農業の副業として発展した。1842年の資料に「曲職」の記述があり、その仕事は江戸時代から続く。

 

 

技術の伝来ルートは不明だが、寺泊地域担当の長岡市立科学博物館の学芸員、加藤由美子さんは「寺泊山田は耕地が少なく、なりわいとして手工業が必要だった。宿場の結束力や真面目な気質が、製作を盛んにしたのではないか」と分析する。

 

 

半世紀前は山田集落の十数件が手掛け、県内各地へ行商に出ていた。しかし裏ごしやせいろを持つ家庭、ふるいを使う農家が減り衰退。職人も減った。2009年に先代が亡くなって以来、職人は足立さん一人の状態が続く。

 

 

足立さんは危機感を募らせ、「新しい商品を通してこの仕事を知って欲しい」と、照明器具や椅子を生み出した。作業工程を撮影、図解する取り組みも博物館と協力して進める。

 

 

地味でも丁寧な仕事をしている自負がある。県内外の老舗料理店、菓子店から舞い込む年代物の修理依頼が信頼のあかしだ。「ニッチでマイナーな仕事だけど、ないとお客さんが困る。要望に応えるために先代から受け継いだ技術を守りたい」と力を込めた。

 

 

と、紹介されています。

 

 

天極堂ではこのように素晴らしい職人さんが利用してくれる、素晴らしい商品(原材料)を取り扱っています。これからも山のネットワークを大切にし、日本の工芸を支えていきたいと思いました。

 

 

今回ご紹介させていただきましたのは、

●マルヤ製作所

●大川せいろ(リンクは大川さんHPではありませんが、詳しく書かれています)

●足立茂久商店(リンクは足立さんHPではありませんが、詳しく書かれています)