その爽やかな香りと春らしい緑色、そして多くの薬効をもって古くから日本人の暮らしに役立てられ、広く親しまれてきたよもぎ。草餅や草団子といった春の和菓子には欠かせない存在で、近年はパンやケーキなどにも用いられている。
天極堂プロでもよもぎ関連商品を複数販売している。今回取材したのは、その内の一つ『よもぎの生葉』を育てる畑を管理してくださっている吉川さんご夫婦。長年農業に従事されてきたお二人だが、よもぎの栽培は今年が初めての試みだという。
よもぎについて
よもぎはキク科の多年草。日本各地に広く自生しているため、食べた事はなくても目にした事がある方は多いのではないだろうか。
春先に採取できる若葉が食用にされる他、止血やお灸、薬湯など、食以外の分野でも活用されている。その効能の多さから別名「ハーブの女王」と称される事もある、まさに万能の薬草だ。
よもぎの栽培

吉川さんが管理しているよもぎ畑、1月初頭の様子。初年度となる今年は計5列の栽培となった。吉川さん(画面中央)の背面三列は”マルチ”という黒いビニールを被せて栽培している

 

はじめて取材に伺ったのは年明け間もない1月初頭。朝から冷たい風と雪が吹き付け凍えるような寒さだったが、この時すでによもぎは地表に顔を出していた。
よもぎのメインシーズンは気候が温暖な4~5月頃だが、苗の植え付けは半年以上遡って9月頃に行なわれる。冬にしっかり根を張らせる必要があるからだ。
苗木は天極堂の橿原工場で育てたもの。栽培についても、吉川さんと天極堂の担当社員で意見交換をしつつ進めている。

「全部はじめてやから、とにかくやってみなわからんね。」
そう話す吉川さん。よもぎ畑の半分だけにマルチがかかっていたのも、マルチの有無による生長の違いを確かめるための実験だ。

 

農薬を使用しない事が天極堂の生よもぎのセールスポイントの一つ。もちろん草引きも手作業で行なわれる

 

よもぎはその生命力の強さでも有名な植物。雪が降るような厳しい冬の寒さの中でも、既にもさもさと葉を茂らせていた。
しかし、よもぎの他にもしぶとい植物は多い。雑草が生えると土中の養分が十分に行き渡らなくなるため、草引きは念入りに行なわなければならない。また、冬の間によもぎをしっかり根付かせるためにはどんどん水をやる事が重要だ。
この日は草引きをした後、収穫しやすいよもぎの植え方や雑草対策について話し合い、次回は春になってから集まってマルチをはがしてみよう、という事になった。
よもぎの収穫

春になり、かなり生長したよもぎ。右の二列と比べると、中央から左の三列は発育が良くないように見えるが…?

 

結局あの後再び畑を訪れたのは、マルチをはがし終えた後の4月上旬。どの列のよもぎも冬季と比べればかなり立派に育ったが、右二列と左三列では葉の発育の様子に大きな差がみられる。
左三列は雑草対策のマルチを被せて栽培していたのだが、どうやらそのマルチが裏目に出たらしい。よもぎの葉の質自体に影響はなさそうだが、葉の分量は見ての通りかなり少なめだ。

 


ある程度の長さがあり、なおかつまだ茎が固くなっていない状態のよもぎがベスト。指で軽く擦ると爽やかな良い香りが広がる

 

春先のよもぎは茎まで柔らかく、ハサミを使わずとも楽に収穫することが出来る。成長すると茎が固くなって食感や味わいに悪影響が出るため、なるべく早めに摘み取ってしまうのがポイントだ。
最初は鎌で刈ろうという話もあったが、一気に刈り取った後で選別する手間を考えると結局は手摘みが一番早く済むため、一本一本長さや色合いを見ながら手で摘み取っていく事になった。よもぎは背が低い植物。葉の質を確かめながら摘み取るため、かがみっぱなしで作業しなくてはならない。見た目以上に辛い作業だ。
トライアンドエラー

よもぎの栽培は初めての挑戦であるにも関わらず、初年度から青々としたよもぎを茂らせた吉川さんご夫婦。
「次からはマルチなしやな」「肥料と刈り方も考えるわ」と、さっそく来年度に向け改善策を考えていらっしゃった。
今後も天極堂と吉川さんたちの二人三脚で、トライアンドエラーを繰り返しつつより良いよもぎを皆様にご提供できるよう努めていきたい。
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